袈裟の種類:歴史と遷移
袈裟(けさ)は、仏教の僧侶が身につける衣装であり、その歴史は古く、現代に至るまでにさまざまに遷移してきました。
このコラムでは、一般の方向けに、袈裟の種類に焦点を当てて、それぞれの違い・役割が分かるよう簡単にご紹介します。
袈裟は、時代によって糞掃衣(ふんぞうえ)、福田衣(ふくでんね)、田相衣(でんそうえ)などとも呼ばれ、仏教僧侶が身につける重要な衣装です。*他にも数多くの別名があります。
起源はインドで、捨てられたぼろ布など、人が使わない布を拾い集めて作られたと言われます。
その布は、人の好まないような濁った青、黒および木蘭色などで、純色と呼ばれる青・黄・赤・白・黒に色を混ぜて濁らせた壊色(えじき)という色が基本とされました。
梵語の名前「カーシャーヤ」はこの色に由来します。
袈裟にはいくつかの種類があります。
例えば、安陀会(あんだえ)は下着にあたり、鬱多羅僧(うったらそう)は上半身を覆うもの、そして僧伽梨(そうぎゃり)は儀式や訪問着に用いられます。
これに食事や托鉢に使う持鉢をあわせて「三衣一鉢」と呼び、僧侶の必需品とされていました。
袈裟は形状にもバリエーションがあり、小さな布を縦に繋いだものを「条(じょう)」と呼び、これを横に何条か縫い合わせて作られます。条数の多い方が尊重され、古い時代の袈裟には十五条や二十三条も見られます。
袈裟の種類
九条以上の袈裟:僧伽梨(そうぎゃり)・大衣(だいえ)
九条以上でつくられた袈裟を指します。重要な法会などに用いられることがある外出着、礼服です。
また、九品衣(くぼんね)とも呼ばれ、九条、十一条、十三条、十五条、十七条、十九条、二十一条、二十三条、二十五条の九種類があります。
十三条切交大衣
僧伽梨二十五条
七条袈裟:鬱多羅僧(うったらそう)・上衣(じょうえ)
七条袈裟は、二長一短からなる七条の袈裟です。礼服であり、正式な法会において最も一般的に着用される袈裟です。
右の写真のように、甲と縁に同様の柄を用いたものは「丸衲衣」と呼ばれます。
切交衲衣
丸衲衣
如法衣
七条袈裟の一種で、木蘭色、青、黒などの壊色が生地に用いられます。
袈裟は、仏教の教えと共にインドから中国を経て日本に伝わりましたが、如法衣は初期からの作りや色味が守られています。そのため、柄は無地のものが基本となっています。
地蔵袈裟
形は如法衣とほぼ同様ですが、甲と縁に金襴や金紗を使って華やかに仕立てられています。
僧階による使用制限はなく、主に私的な法会、葬儀や法事に用いられることが多いです。
地蔵袈裟
五条袈裟:安陀会・中衣
安陀会は、もともとは室内や作務衣として着用されました。それが変化した現在の五条袈裟は、法事や法要などにも用いられています。
略正装とも言われ、さまざまな種類があります。輪袈裟・半袈裟などの略式袈裟は檀家さんも着用されます。
紋白五条
五条袈裟で、寺紋や宗紋を装飾としたものです。
「もんじろ」あるいは「もんぱく」と呼ばれます。
桐巴紋
東寺雲
桐巴紋乱付
高野山内の五条袈裟
精好
黒袈裟
威儀五条
金蘭を用いてつくられた五条袈裟のことを指します。
以下の三種も、つくりは五条となっており、通常の五条袈裟を縮小・簡略化したものです。
小野塚五条
割切五条
折五条
まとめ
冒頭に記載のとおり、元来インドにおける袈裟は、他人が好まない布(継接)かつ、青、黒、木蘭職などの目立たない色でした。
それが、中国、日本と伝わる中で、素材や装飾において独自の文化的要素が加わりました。
中国、日本は、気候がインドとは異なりますので、袈裟はだんだんと被服としてではなく、装飾的な衣装となり、袈裟の下には変わって法衣を着用するようにもなりました。
日本においては、様々な色や金襴の布地が用いられ、その組み合わせによって僧侶の位階や特権を表すものになりました。
宗派や階級によって使用する生地や文様に決まりがあったりするのは現在でも変わっていません。
下記コラムもご参考にしてください